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名古屋地方裁判所 昭和46年(レ)72号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本件の街路灯が東雲橋の中央北端の北、約五七メートル先付近からさらに北にのびた中央分離帯の南端内に設けられていること、東雲橋の幅員は約一一メートルであるが、その南北はいずれも道幅が広くなつていること、訴外菅沢富雄がその運転車輛を本件事故前の昭和四五年八月九日本件街路灯に衝突させてこれを破損したため、街路灯が点灯せず、この事実を同日被控訴人において了知していたこと、本件事故当時も街路灯は消えていたが、消灯を知らせる赤色警戒灯などは置かれていなかつたこと、当時は雨が降つていたことは当事者間に争いがない。

以上の事実に<証拠略>を総合すれば、本件事故現場および事故当時の控訴人の運転状況につき、次の事実が認められる。

(一) 本件事故現場は半田市上浜市上浜町一〇二番地先の半田市役所前から東雲橋を通り、阿久比川に沿つて半田大橋の方向にほぼ南北にのびるアスファルト舗装の平担な道路上である。現場附近の状況は別紙図面のとおりで、東雲橋の幅員は前記のとおり11.5メートル(延長は63.2メートル)でその南北の道路に比べて狭くなつているが、南側は漏闘状をなして拡がり、車道幅員は21.55メートルで、前記のとおり、東雲橋中央の北端から56.5メートル付近から北にのびる幅1.95メートルの中央分離帯(本件分離帯)によつて、九七八メートルの北行車線と9.82メートルの南行車線とに区分されている。道路は東雲橋の北端まではほぼ直線をなしているが、それから前記中央分離帯の切れる約一一〇メートルの間は南々東から北々西に(左方に)ゆるやかに僅かに曲がり、次の中央分離帯から僅かに右に緩かに曲つて北にのびている。東雲橋の約一二八メートル南方からはさらに南に向けて中央分離帯が設けられ、右分離帯の北端から橋まではゆるい上り勾配をなしているため、同所からでは、東雲橋の橋上およびその前方の道路面上の状況を見通すことはできないが、昼間晴天においては本件分離帯の南端(同所をA点とする)から0.9メートル北側の位置に設置された高さ6.15メートルの支柱から東西に約二メートルの鋼管腕をのばした本件街路灯を見ることができる。道路の中央には幅一五センチメートルの白線(センターライン)が引かれ、東雲橋中央北端の北約32.6メートルの地点からはA点分離帯の両側に向つて二本に分岐し、右白線にはヘッドライトに反射するようガラスビーズを混入した塗料が使用され、白線を引いた上にもガラスビーズがふりかけられている。その他東雲橋の欄干に夜光塗料が塗布され、本件道路は当時法定制限時速六〇キロメートルになつていた。なお同橋の南側左端および北側右端にはそれぞれ照明灯が設置されているが、北側右端の照明灯の明かりは右のA点まではとどかない。

(二) 控訴人は昭和四五年八月一五日午後八時五〇分頃本件車輛を運転して本件道路北行車線のセンターライン寄りを時速約五〇キロメートルで北進し、東雲橋手前の上り勾配にさしかかつた。同車の前後および対向車線に他の車輛はなく、その頃ワイパーがきかない程の激しい夕立に見まわれ視界は悪かつたが、前照灯を減光し、そのままの速度で同橋を通過し、四〇メートル付近に本件の街路灯があるのに気づき、急ブレーキをかけつつ左にハンドルを切つたがまに合わず本件車輛右前部を本件街路灯に衝突させ、本件事故を惹起させるにいたつた。控訴人は、衝突前、センターラインの白線があることやこれがY字型に分れていることにも気がつかなかつた。

以上の事実が認められる。

(三) 右認定の事実によれば、本件道路の施設、即ち中央分離帯の位置、幅、形状、方向、道路の曲折状況、街路灯の位置等に瑕疵があるとは認められない。その施設はむしろ良好の部類に属するというべきである。このような道路状況の下で発生した本件道路は、余程特別な事情のない限り、通常では予測されないものと考えられる。

道路の施設がいかに良好であつても、自動車の運転する者が無暴な運転をしたのでは事故の発生は避けられない。居眠り運転、脇見運転、著しいスピードの出し過ぎなどはその例である。本件において、控訴人は、夜間、前照灯を減光して、晴天でさえもその障害物確認可能距離が三〇メートル以下であるというのに、折柄激しい雨に襲われ、ワイパーも利かない程に視野を妨げられながら、時速約五〇キロメートルもの高速で疾走している。その上、自己が進行する道路上に描かれているセンターラインの白線にも気がつかなかつたというのであるから、自動車運転手として基本的な前方注視は甚だおろそかであり、漫然と疾走をつづけていたものといわざるを得ない。本件事故は、控訴人のこの重大な過失に原因するものと認められる。

本件街路灯は、本件事故六日前に訴外菅外菅沢富雄が点灯している支柱へ衝突し、その事故によつて故障し、本件事故当時点灯していなかつたのであるから、それは道路の施設が完全に保持されていなかつたという意味において瑕疵というべきものである。しかしながら、前示のような本件事故当時の控訴人の視界状況、スピード、運転態度から併せ考えて見るとこの街路灯が点灯していなかつたことが本件事故の原因をなしている。換言すれば、これが点灯してさえいたならば本件事故は発生しなかつたであろうとは認め難い。控訴人は原審においてこれと異る供述をしているが直ちに措信し難い。帰着するところ右記の瑕疵と本件事故の発生とは相当因果関係を欠くものというべきである。

(西川力一 藤井俊彦 柄多貞介)

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